主著紹介

★『チェコ・ゴシックの輝き――ペストの闇から生まれた中世の光』(成文社)

 チェコ王と神聖ローマ皇帝を兼ねたカレル4世(チェコ王1346~78。神聖ローマ皇帝1346~78)とその息子ヴァーツラフ4世(チェコ王1378~1419。神聖ローマ皇帝1376~1400)の時代に、神聖ローマ帝国の中心地となったプラハとチェコはゴシック文化の一つの拠点となり、数多くの壮麗なゴシック建築を造りだしました。しかし、この時代はペストが猛威を振るった時代でもあり、そのペストなどの闇から、「美麗様式」と呼ばれる輝かしい芸術作品も生まれ、また人間が死と論争する『ボヘミアの農夫』(ドイツ語)や不幸と論争する『織匠』(チェコ語)など特異な文学作品も書かれました。更に、ルターよりも百年前にヤン・フス(1370 頃~ 1415)が主導した宗教改革(フス運動)がチェコに広がり、それが宗教・思想・社会のみならず、文学や音楽も含めてチェコ文化を大きく変えていきました。本書は、そのようなプラハとチェコのゴシックの全体像を、多数の図版や資料と共に日本で初めて明らかにした本です。詳しくはここを参照してください。

★『チェコ語辞典 改訂版(第三版)』(ČESKO-JAPONSKÝ SLOVNÍK) (成文社)第1・2・3巻は、約5万7千語の見出し語を収録した、初めての本格的なチェコ語日本語辞典です。別巻1・2は、延べ約8万の語彙を収録した日本語チェコ語語彙集です。詳しくはここを参照してください

★『プラハのバロック――受難と復活のドラマ』(みすず書房)は、知られざるバロック芸術の宝庫プラハとチェコのバロックについての、日本で初めての本格的な研究です。チェコの劇的で複雑な歴史の襞に分け入り、豊富な図版・写真を用いながら、イタリア・バロックと異なるチェコ・バロックの特質を解明し、プラハ・バロック芸術の傑作を具体的 に分析しつつ、その隠された驚くべき深みに光を当てています。

★『チェコ民族再生運動──多様性の擁 護、あるいは小民族の存在論』(岩波書店)は、大言語・大文化(ドイツ語・ドイツ文化)の圧倒的優勢のもとで衰退した小言語・小文化(チェコ語・チェコ文 化)を擁護し再生させた18世紀後半~19世紀前半の「チェコ民族再生運動」の全体像を明らかにすると共に、グローバリゼーションと大言語(英語)の優位 化と多様性の衰退が進む今日の世界における言語・文化・民族の存在の意味、多様性と個性を守ることの意味を問うた大部の研究です。より詳しくはここを参照してください。

★『黄金のプラハ――幻想と現実の錬金術』(平凡社選書)は、ヨーロッパのちょうど真ん中にあり、中世以来ヨーロッパの十字路として栄えてきた、ヨーロッパでも最も美しい町の一つ、プラハを、 チェコ文化論、ドイツ文化論、ユダヤ文化論を交え、豊富な図版を入れて描いた本です。

★『マサリクとチェコの精神――アイデン ティティと自律性を求めて』(成文社、サントリー学芸賞および木村彰一賞受賞)は、チェコを代表する思想家・政治家であり、チェコスロヴァキア独立の父に して初代大統領となったT・G・マサリクの思想を、チェコの精神史の中に位置づけ、今日の世界におけるマサリクの思想の意義も探りながら、特に彼の「人間性」と「民主主義」の理念について解明した本です。